アドバイザーブログ

アートを届けるために必要なもの

先日、鳥取で開かれたアートマネージメントセミナーの講師として参加させていただきました。その時にとても印象的な質問をいただきましたので紹介させていただきます。

質問してくださった方は自身の考え「アートから最も遠い人たちがアートを最も必要としている」ということを私に教えてくれました。そのためにアウトリーチ事業にとても力を入れているそうです。アートから最も遠い人たちとは、貧困層や障害のある方たちなど、劇場に訪れる機会がほとんどない人たちのことです。しかし、今までは障害のある方たちにアートを届けるという部分が弱かったので、今回の講座をきっかけに積極的に取り組んでいきたいとおっしゃっていただきました。

さて、私への質問ですが、私の講座の話は「(障害のある方たちが)劇場に来れる環境をつくる」という話でしたが、質問してくださった方は「(障害のある方たちに)アートを届ける」ということも大切であると指摘したうえで、そのためにはどうすればいいのか。障害のある方たちにもアートを届けるには何が必要なのか?南部の考えを聞かせてほしいと言われました。

私は以下の3つをポイントとして答えさせていただきました。
①届けなければならない理由や目的を担当スタッフがしっかりと理解することが必要
②その理解をプロデューサーや制作ディレクターだけではなく、当日の運営スタッフや出演者も共有することが必要
③届ける先のこと、届ける人のことを想像して創造することが必要

アートから最も遠い人にアートを届けるには、覚悟が必要ではないでしょうか。今までアートに触れる機会が殆どなかった人たちの中には「見たい」とか「聞きたい」と思っていない人もいるかもしれません。拍手もないかもしれません。いわば完全アウェイの会場です。そんな中に飛び込んでアートの素晴らしさを伝えるには、プログラムの内容や時間に工夫が必要でしょう。体験や参加いただくことも大切になってくるかもしれません。

でも、覚悟を持って取り組めば必ず届くと思います。劇場に環境をつくることも大切。さらに、届けることも大切。どちらにも社会的想像力が必要だと思います。素晴らしい問題を私に投げてくださったことに感謝します。ありがとうございました。

南部充央の講座

鳥取県には、大きな文化芸術事業が2つあります。ひとつは障害の有無にかかわらず、誰もが参加できる「あいサポートアート」事業。もう一つは県民参加型アートイベント「鳥取県総合芸術文化祭・とりアート」事業。この両輪で進んでいるのですが、ゆくゆくは一本にまとめて、誰もが参加できる真の総合芸術文化祭をつくっていくことを目指しておられます。そのために実行委員会を立ち上げ、県民の方々が懸命に取り組んでおられます。

また一つ、バリアフリーイベントに懸命に取り組んでいるところとつながることができました。このご縁に感謝し、私も懸命に取り組んで参ります。

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