アドバイザーブログ

改めて学んだこと(武田誠 編)

8月、ガイドヘルパー養成講座(知的障害課程)の実習で、阿倍野区内にある障害福祉サービス事業所に参りました。

まず、スタッフさんから事業所の方針や利用者に接する時のポイント、当日出会う利用者さんの注意点などを伺った後、早速スタッフさんともう一人の実習生さんと一緒に近所に住む女性利用者のお宅へお迎えにあがり、天王寺駅周辺の散策へ出かけました。

彼女は発語がうまくできないので、身振りや表情で「何がしたい」「何がこわい」などを読み取ります。施設スタッフさんから、このポーズは彼女の好きなテレビ番組のこと、こんなポーズは飛行機のことと、ポーズとその意味を教えてもらいコミュニケーションを図りました。

<ディズニーランド><飛行機>というポーズに対して、「ディズニーランドに飛行機でまた行きたいんやね」と聞き返すなど、彼女の意志(気持ち)を確認します。

ビッグ・アイで知的障害の方に接する機会は多いですし、そのようなコミュニケーションは好きなので、すぐに打ち解けました。
知的障害の方は運動不足になりがちなので、近所の散歩は日課とのこと。スタッフさんと一緒に雨の日も風の日も年中ほとんど休まずに歩いているようでした。この日も酷暑でみんな汗だくになりながら、彼女が行きたいコースで歩き、涼を求めて商業施設の中へ…。すると、突然大きな声を出して、立ち止まります。何が起こったのかと思っていたら、スタッフさんから「警備員さんを見つけたんやわ」との言葉。過去に警備員の方ともめた経験があり、警備服の人を見るとストレスになって、声を上げたり、立ち止まったりするようです。その後も何度も急に立ち止まっては警備員さんに警戒するのですが、とにかく私たちよりも早く警備員の姿を確認するので、彼女の洞察力には驚きました。

散歩に出かける前にスタッフさんから、急に彼女が大きな声を出しても、それを注意しないで無視してほしいと聞いていました。『迷惑行為』→『声をかけてもらえる=自分にかまってもらえる』と思って、「かまってちゃん」にならないようにするためです。

周りの迷惑を考えると「大きな声を出してはダメですよ」と言いたくなりますが、そこはグッとガマン。この散歩ではいろんな気づきがありましたが、この注意をせずにしれーっと見過ごすことが難しく、良い勉強になりました。

ちなみに、彼女の最近のお気に入りは、猫の鳴きマネ。ニャー、ニャーと可愛い声でモノマネを披露してくれます。「ホメて伸ばす」が作業所のモットー。「上手やねー、ホンマの子猫かと思ったわ」とホメながら、みんなでニャーニャー。天王寺の路地裏をニャーニャー鳴きながら歩く楽しいお散歩でした。

午後は知的障害のある元気な男子高校生二人と男性スタッフさん二人、実習生二人の男6人組で「大阪歴史博物館」へ出かけしました。いろんな展示物にワーワーしながらもさすが現代っ子。各展示エリアでタッチパネルを見つけてはクイズに挑戦します。しかし、順番にパネルを開いていくわけでもなく、なんとなくタッチしては出てくる画像や動画を楽しんでいる様子。出てきたクイズを一緒に読んでは、その答えを考えて選択するのですが、一番タッチしやすかったところにあったのか何度も「難波宮の埋蔵物クイズ」のパネルに…。遺構の片隅にある泥まみれの骨がクローズアップされ、「この骨は何の骨でしょう?」というクイズです。正解は「人骨」。彼は何度も何度もそのクイズのパネルを開いては「人骨」画像を見て喜んでいました…。これから先、こんなに「人骨」画像を見ることはないでしょう。

彼らは本当に元気で明るくいろんなことに興味をもって展示を見てまわり、アッという間に帰りの時間となりました。途中、同行していた若い方のスタッフさんに展示物でボケを要求して笑い、それをもう一度見たいとスタッフさんにせがんだところ、それをわざと無視し、次の展示エリアに進むという高度な「笑い」を見せてくれました。周りの目を気にせず頑張ってボケ損をしたスタッフさんの姿が忘れられません。

こうして、午前は天王寺駅周辺をお散歩し、午後は「大阪歴史博物館」見学と忙しい実習でしたが、ご本人の意思を尊重すること、そのために必要なコミュニケーションの大切さなどを改めて気づかされました。一緒に歩いた利用者やスタッフ、もう一人の実習生のみなさん、本当に明るく楽しい道中記でした。ニャー!

※南部と私ともにガイドヘルパー養成講座(知的障害課程)を修了しました。

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