アメリカの芸術界最高位の勲章を受章した演出家ピン・チョンさんをニューヨークから招聘して制作したドキュメンタリー・シアターUndesirable Elements『生きづらさを抱える人たちの物語』公演が、1月27日に千秋楽を迎えました。
公募のオーディションで選ばれた出演者6人が、自らのエピソードを年代ごとに語り、演じる舞台公演で、多くの皆さまに観劇していただきました。
もちろん、視覚障害の方のために舞台の様子を説明する音声ガイドなど、鑑賞サポートを実施したほか、日本語のわからない方(英語圏の方)のために英語字幕も付けて上演しました。今回、音声ガイドは情報量の多いものと少ないものとの2バージョンを用意し、利用者自らレシーバーのチャンネル操作で好きな方を聴けるなど、新しい試みにもチャレンジしました。
鑑賞サポートの利用者を案内した時や、レシーバーを回収した時、今後の参考のために生の声を伺っていますが、実にいろんなご意見やご望がありました。
「開場時間より早く先行入場できたので、落ち着いて席に着けた」
「音声ガイドのチャンネルを自分で選べたのが良かった」
「字幕が小さかったので、もう少し大きいサイズにしてほしかった」
「両耳で生音を聴きながら、音声ガイドも聴きたい」…など
ご要望の中には、公演チラシに追加した方がよい情報や、運営スタッフの対応でできることもあれば、技術的に難しいこともありましたが、今後の鑑賞サポートに活かせたいと思います。
そう、出演者は6人でしたが、オーディションで選ばれなかった人たちなど、誰もが“生きづらさを抱える人たち”なので、その象徴として舞台上の出演者の並びには7番目のイス(オフィスチェア)が置いてありました。物語のラストシーン、誰も座っていないそのイスがくるりと回るという演出があり、音声ガイドでその状況を聞いた一人の視覚障害の男性はすごく感動されたそうです。その方の元にレシーバーを受け取りに伺った時、「自分も生きづらさを抱える一人なので、ぜひ7番目のイスに座らせてほしい!」「舞台に上がってはダメですか?」と何度も懇願されました。さすがに舞台に上がることはできないので、丁重にお断りしましたが、この物語は出演者だけでなく、いろんな生きづらさを抱えたみんなの物語だったのだと改めて感じました。