2020年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。オリンピック・パラリンピックはスポーツだけの祭典ではありません。文化庁では、東京オリンピック・パラリンピックを文化の祭典としても成功させるための文化プログラムを全国各地で実施しようとしています。
2015年5月には「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(第4次基本方針)が閣議決定され、我が国が目指す「文化芸術立国の姿」として4つが挙げられました。その一番はじめに記されている言葉が”あらゆる人々が鑑賞や創作に参加できる機会がある”です。
では、現状はどうでしょうか?鑑賞や創作の場から排除されている人はいないでしょうか。排除されていなくても、そこに合理的な配慮がないために鑑賞することができない人もいるのではないでしょうか。
公益財団法人全国公立文化施設協会が実施した調査アンケート「劇場・音楽堂等における障害者対応に関する調査報告書」(文化庁委託事業/2015年3月)によって、多くの劇場がハード的な問題や人員不足、職員のノウハウ不足という問題を抱えていることが表面化されました。
私どもは15年にわたり大阪府堺市にある国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)で健常者と障害者がともに文化芸術を鑑賞・創作するバリアフリーイベントの企画・制作・運営に携わってきました。その経験とノウハウを全国の劇場に広めたいと思い、この度「バリアフリーイベント支援プログラム」をつくりました。
「バリアフリーイベント支援プログラム」は、現在おこなわれているコンサートや演劇公演などの舞台芸術を、障害者や高齢者、小さな子ども連れの方など、誰にとってもやさしいバリアフリーイベントに変えるプログラムです。
2015年8月には、兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)の演劇公演「さらっていってよピーターパン」で実施させていただきました。この公演では、築37年という決してハード的に恵まれた環境ではない劇場(客席:396席)に盲導犬を含む27人の視覚障害者がチケット料金を払って観劇に訪れました。27名中19名の方がアンケートに回答し、公演の満足度:89%、わかりやすかった:63%、スタッフの会場案内の満足度:89%という結果を得ることができました。今まで一度も視覚障害者の対応をしたことのなかった職員が、いったいどうやってここまでの結果を得たのか。ハード的な問題や職員の人員不足をどうやって補ったのか。
支援プログラムは、経験やノウハウを伝える講座や体験研修だけでなく、実際に地域スタッフをサポートしながらバリアフリーイベントをつくります。私どもが去った後でも、自分たちだけでバリアフリーイベントを継続的に実施していけるよう、地域の人材を育てることを目的としています。
今ある事業のひとつに、まずは取り入れてみませんか。