アドバイザーブログ

車イスでもスムーズに

「バリアフリー」という言葉で一般的に思われるイメージは「車イスの方が利用できるスロープや段差のない設備」だと思います。もちろん、その他の障害の方を忘れてはいけませんが、車イスの方への配慮は高齢者や幼児、妊婦などにも有用で、「バリアフリー」の基本になると思われます。

大阪府貝塚市のコスモスシアターの事業担当者より「車イスの方など障害のある方も楽しめるイベントをつくりたい!」との声がかかり、アドバイスに入りました。中ホールの客席前方がロールバック式の座席収納タイプでフラットにできるため、車イスやストレッチャーの方をはじめ、段差の苦手なご高齢の方も入場しやすいバリアフリーな空間になります。そこにイスを並べて、障害のある方もない方も一緒に楽しめる客席にしました。

3月12日の本番日。午前中は障害のある方への接遇などについての講座を開き、市民スタッフ“キャットハンド”のみなさんに車イスの介助や、視覚障害者の方の手引きなどを体験してもらいました。

開場前、すでに車イスの方も含めて数組のお客様が中ホールの前におられました。今回は有料公演の自由席でしたので、障害のある方ばかり優先にしては健常者の方から特別扱いに思われる可能性もありましたが、安全性も考えて、車イスの方と介助の方だけ少し早く入場していただきました。車イスの方には介助が付き添われていたり、自走するので大丈夫という方ばかりで、スタッフが介助する機会はほとんどありませんでしたが、それぞれご希望を伺って客席内に案内できました。

開演。関西で活躍するアカペラユニット“Be in Voices(ビー・イン・ヴォイセス)”が、童謡、ジャズ、民謡といろんなジャンルの歌をハーモニーで響かせました。障害のある方もない方も一緒に歌ったり踊ったりできる趣向も盛り込まれ、車イスの方も上半身でリズムを取りながらとても楽しんでおられました。

今回のライブは貝塚のみなさんにとって、障害のある方とない方が音楽を通じて時間と空間を共有した貴重な出来事(イベント)になったと思います。会場となった中ホールはもともと車イス席が無く、客席前方を収納しないとバリアフリーにはできません。また、中ホールの舞台裏には階段があり、他にも車イスの方にとって使い勝手が厳しいところが見られました。しかし、今回のようにハード面をクリアにして、車イスの介助についてソフト面を学べば、車イスの方をお迎えすることはできます。当日は地元で大きなお祭りがあったため、事前に声をかけた障害者施設の方もそちらに流れたようで、車イスの方は少し寂しい数でした。そのため、熱心に研修を受けた市民スタッフのみなさんの出番が少なく残念でした。

障害のある方へのアテンドは、実際に当事者の方と触れ合うことで磨かれると思います。事業担当のみなさんは初めての試みで色々苦労されたと思いますが、次は視覚障害の方への配慮も増やすなど少しずつ経験を重ねて、障害のある方が気軽に舞台芸術を楽しめるホールになっていただければと願います。

スタッフ:武田誠

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