ワハハ本舗による新作コメディーの運営を担当しました。
ワハハ本舗の上演は昨年に続き2回目。前回と同じくろう者の女優・大橋ひろえさんと聴者の女優・大窪みこえさんが、手話と口話で会話を繰り広げる二人芝居です。
演者の手話が近くで見られるように狭い研修室にステージと客席を組み、外光を遮光するために黒布(暗幕)を窓側に張って小劇場の雰囲気も醸し出していました。
手話と口話でのお芝居なので、手話の意味を舞台の一番後ろに張った白布に字幕で映したり、口話には手話が少しできる女性という設定で大窪さんが手話をつけて情報をサポートしながら物語を進めます。しかし、あくまでも日常会話の中での手話と口話のやりとりを演じているので、100%意味を訳しているわけではありません。観客のろう者と聴者は読み取れなかった手話や言葉のニュアンスを想像して楽しむ面白さがありました。
手話の表現で印象的だったのはラグビーの五郎丸選手を表す手話(ポーズ)。二人が理想の男性像を話している中で五郎丸選手の名前があがり、キックの前にする忍者のようなあのポーズで「五郎丸」と表現されていました。うまく時事ネタも取り入れ、ろう者も聴者も感心しながら笑っていました。
ストーリーは断酒会で知り合った二人の独身女性(ろう者のマッサージ師と聴者の漫画家)がお酒を断つために、そして恋を成就させるために奮闘するコメディーでした。会話だけでなく、ドタバタとした動きで笑いや涙を誘い、本当に楽し内容でした。また、ろう者と聴者との間で起こりがちなトラブル(ろう者は後ろから声をかけるとビックリしてしまうなど)も随所に盛り込められ、ろう者への理解が深まるように工夫されていました。
この公演には、視覚障害者の方のためにイヤホンガイドによる状況放送も実施されました。大きなホールだと同時通訳ブースなどがありますが、会場は研修室。同じ部屋の中ではステージの状況を説明する声が他の観客の迷惑になるので、研修室の狭い倉庫の中にモニターや機材を仕込み、ステージの映像をモニタリングしながら放送しました。実際に観劇した視覚障害の方は、状況放送のおかげでみんなと一緒に楽しめたと喜んでおられました。このような情報サポートスタイルはビッグ・アイなど一部の会場でしか今のところできないかもしれません。いずれどんな小さな芝居小屋でも、いろんな方が楽しめるように状況放送や音声補聴、同時通訳などの取り組みが行われることを願います。
担当:武田誠