ビッグ・アイアートフェスティバル2日目のステージプログラムでは、筑波技術大学の聴覚障害者ストリートダンスサークル「Soul impression」と近畿大学芸術学科でコンテンポラリーダンスを学ぶ学生たちによる合同ダンス公演が企画され、ろう者の学生と聴者の学生が一つの作品づくりに挑みました。
今回は舞台制作の担当として、この作品への字幕づくりにも取り組みました。
事前に練習風景の映像資料を提供してもらい、いくつかの作品に台詞があることを知りました。そこで、台詞をテキストで提供してもらいました。次に、音源が届くと、音楽以外の音(効果音)が組み込まれていることを知りました。例えば、「カチカチカチカチ」や「ピピピッ」「ピンポーン」などです。これらをダンスパフォーマンス中に文字で表しただけでは伝わらないのではないかと思い、次のように表示して欲しいと字幕スタッフにお願いしました。
—–表示例—–
(時計の秒針が動く音)「カチカチカチカチ」
「ピピピッ」(体温計が鳴る)
「ピンポーン」(インターホンが鳴る)
こうすることで、その音が何の音なのかがわかります。
音によって舞台上が駅のホームであることを表している作品もありました。そこで、音源から聞こえる台詞や効果音をテキストに起こし、聴覚障害のある方たちにも舞台上が駅であることがわかるようにしました。
—–表示例—–
チャララララーン♪(駅のホームでチャイムが鳴る)
間もなく三番線に各駅停車桜木町行きが参ります。危ないですから…
プシュー(電車のドアが閉まる)
発車します。
もうひとつこだわったことがあります。作品中に流れる音楽の歌詞に合わせて手話ダンスを踊るプログラムです。はじめはその歌詞を字幕として表示する予定でしたが、手話ダンスを踊る学生から自分でつくったパワーポイントデータで映し出してほしいと言われました。確認してみると、やや丸みのある優しいフォントが画面中央にアニメーションで現れるといったものでした。リハーサルで実際にそのパワーポイントのスライドを歌詞に合わせて映し出してみると、思ったよりフォントサイズが小さく感じました。そこで、字幕スタッフにお願いしてフォントサイズを大きくしてもらい、画面中央より少し上に映し出すことで、より印象を強くしました。
この歌詞だけは、ただ単に字幕として映し出すのではなく来場者に強いメッセージとして伝えたかったのです。
音に強弱をつけるのと同じように、文字にも強弱をつけることで印象を変える。情報保障とは少し違うかもしれませんが、聴覚障害者が踊るダンスパフォーマンスの演出も兼ねた情報保障になったのではないかと思いました。