アドバイザーブログ

バリアフリー狂言でござる

今回で2回目となるバリアフリー狂言公演。狂言公演での鑑賞サポートのポイントは、なんといっても字幕表示です。狂言の世界では舞台上で使われるセリフはすべて室町口語であるため、普段聞き慣れていない人にとってはセリフを聞いて(文字をパソコンに)打ち込んでいくのは非常に難しい作業になります。そこで、事前に台本をお預かりし、文字をモニターに流し込んでいくといった方法をとっています。それでも、聞き慣れていない人にとってはわかりにくい場合があります。

しかし、今回の狂言公演には大きな問題が2つありました。1つ目は、アドリブの入るシーンがあるということ。2つ目は、舞台と橋掛かりで同時に話が進む場面(同時にセリフを話すタイミング)があるということでした。

舞台袖で対応策についてスタッフで話し合い五里霧中の状態が続いていたとき、そこに野村萬斎さんが入ってきてくれたのです。萬斎さんは状況を把握すると、まずアドリブシーンの内容が伝わるセリフを決めて台本にしましょう!と即断しました。そして、台本以外のアドリブは字幕として出さないことを決めました。次に、舞台と橋掛かりで同時に話が進むシーンについては、狂言の中で何が優先されることなのかを指導いただき、優先されることを字幕に出し、後は字幕に出さなくても動きで内容が伝わり、楽しんでいただけることを教えていただきました。

今までは、鑑賞サポートを実施するために出演者の方への理解として「ゆっくりとしゃべっていただきたい」「セリフに間を取っていただきたい」など、お願いするばかりでした。今回の狂言公演では、鑑賞サポートスタッフが狂言の世界を学び、狂言師の方と直接やり取りする機会をいただけたことで狂言師の方にも鑑賞サポートの実情を知っていただけました。その結果、ただ単に台本を預かっただけでは実現できなかったきめ細かな字幕表示を実現することにつながりました。この機会をつくっていただき、字幕表示の制作の在り方を新たに導いていただいた野村萬斎さんに心から感謝します。

手話と字幕を実施している狂言舞台

ビッグ・アイステージ万作の会狂言会「バリアフリー狂言でござる」
実施/2015年4月4日(土)
主催/ビッグ・アイ共働機構

Top